2011年09月17日

トラキア生まれのオルフェウス

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オルフェウスはトラキア王オイアグロスと音楽の女神カリオペの息子だ。
アポロンから竪琴を習い、やがてギリシャでいちばんの名手になった。
オルフェウスが竪琴を奏でると嵐も静まったほどだ。

オルフェウスにはエウリュディケという妻がいたが
ある日、毒蛇に噛まれて死んでしまった。
オルフェウスは妻を取り戻すために黄泉の国へ行き
楽の音で冥界の人々を魅了して黄泉の国の王の前に立った。

黄泉の国の王ハーディスは
冥界を出るまで振り返ってはならないという約束を求めた。
オルフェウスは約束に従って妻を連れ出したが
出口の光が見えたところで振り返って妻を見てしまった。
妻は再び黄泉の国に戻ってしまった。

これがオルフェウスの名高い神話の部分だが
その後、オルフェウスは宗教の開祖となった(と、されている)
それがオルフェウス教だ。
ギリシャの古代宗教は死語の世界についてほとんど言及していないが
同じギリシャの密教だったオルフェウス教は魂の不死を説き、
輪廻転生によって肉体が繰り返し生まれ変わるとしている。
そして輪廻転生は悲しみの輪であり、
最終的にはそこからの解脱を目的としている。

トラキアにはもともと土着のディオニュソス崇拝があった。
これは集団が歌い踊る祭礼をともなっていた。
ディオニュソスはローマ神話におけるバッカスで
要するに酒の神、豊穣の神、酔っぱらいの神であり
その誕生の過程で一度死んで生き返っているから死と生命の神ともいえる。
そのキーワードを抜き出して
「酒、豊穣、酩酊、死、生」と「集団の歌と踊り」をくっつけてみると
だいたいその賑やかさが想像できるが
そのディオニュソス教から禁欲的な異端の宗教として生まれたのが
オルフェウス教だったのだ。
非常に乱暴な説明をすると
ディオニュソス教は集団で歌い踊る宗教で、オルフェウス教は個人が
精進する宗教といえると思う。

オルフェウス教は魂の不死というのがいかにもトラキア的だが
ギリシャへ渡り都市化したオルフェウス教は秘密の宗教だったので
正確な記録というものもなく
ただ、文明の向こうに位置すると思われていたトラキアの影響を知る
小さな手がかりに過ぎないのが残念だ。



出演者情報:瀬川亮 http://www.weblio.jp/content/瀬川亮
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