2008年12月21日

文學ト云フ事10「野菊の墓」(伊藤左千夫)

文学に見る作家の私生活 5

伊藤左千夫は1864年、千葉県の殿台村(現山武市殿台)に生まれた。
生家は農業を営む旧家であり、
父はすぐれた漢学者で和歌にも通じていた。

左千夫は政治家を志して明治法律学校(いまの明治大学)に
入学するが、眼病のために学業を断念。
22歳のときに家を捨て、
三冊の書物とわずか一円の現金を手に上京する。
4年間東京神田区の牧場で働いた後
独立していまの錦糸町あたりで牛乳搾取業を営み
生計に余裕が出てくると和歌や茶の湯を学び始めている。

 牛飼いが歌読む時に世の中のあたらしき歌大いに起る 
  (1900年・伊藤左千夫)

左千夫が「野菊の墓」を書いたのは40歳も過ぎた頃で
その舞台も故郷の殿台村ではなく矢切村になっているが
淡白な文章で描かれた田園風景や旧家の人々のありようは
読み手の胸に響く。

夏目漱石に
「自然で、淡白で、可哀想で、美しくて、野趣があって結構です。
 あんな小説なら何百ぺん読んでもよろしい」
と激賞されたこの小説にあらわれている私生活は
作者が子供時代を過ごしたふるさと千葉の
牧歌的な風景そのものだろうと思われる。



タグ:野菊の墓
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